ページ

2012年4月30日月曜日

バッティ アヨ、ガヨ。


日々、計画停電は当たり前の顔で続いている。

週62時間だから、1日8時間以上は電気がない毎日だ。





ところで、電気はネパール語で「バッティ」。バッテリの訛りだろうか。

停電の瞬間になると、アパートの上や下、ついでに近隣から、

「バッティ、ガヨー!」の声が聞こえる。

訳せば「電気が“去ってしまった、行ってしまった”」という意味だが、

分かりきった状況をわざわざ毎回声に出してリアクションを見せるから面白い。

(ガヨは、原形が「ジャンヌ」で、完了形が「ガヨ」)




電気が“去る”の反対は“来る(アウヌ)”。

停電が終わった瞬間は、“電気の到着”、とでも言うのか、

「バッティ、アヨー!」の叫びがまた聞こえる。子供の声、大人の声。

嬉しそうだ。




しかし今日は、夕方いつもの30分遅れでバッティが “アヨ”、したのに

その30分後に“ボン!”と言う音がして、

また“ガヨ”してしまった。火花が見えたと、妻は言う。



訊けば、電線から電気を送る装置がクラッシュしたということだ。

いつ、直ることやら・・・



近所はまた、漆黒の闇。

番狂わせにさぞかし苛立つかと思いきや、すぐにまた皆楽しそうに笑っている。

“バッティ、アヨ パチ ガヨー!(電気が来たと思ったら、またいっちゃったー)”


・・・この危機感のなさには影響されまい、

とは思っていたが、なんかもう、どうでもよくなってきた。


怒っても、笑っても、夜は更けていくのです。



一応使えるようです。アサンで。


午後は空港に、アメリカに帰る友人を見送りに。
次に会えるのは、いつの日か。












2012年4月29日日曜日

モンスーンが来る前に





5月の半ば頃、

モンスーンが来ると、ネパールを含む南アジアに雨季がやってくる。

そうなればトレッキングのシーズンはひとまず終わりだ。

雲や霧で、山が見えなくなる。



その前に、ずっと延びていた計画が、

ようやく来週実現できることになった。



カトマンズから北東へ向かえばサガルマータ(エベレスト)、

南西にはアンナプルナというそれぞれ有名なエリアがある。


手に入れた地図は、

アンナプルナ周辺のものだ。 エベレストは秋にとっておくことにして。



出発起点のポカラという街から、「ゴレパニ」、と呼ばれるエリアを含むもので、

さらにそこから伸びる「プーンヒル」という展望台までのルートが載っているものを

選んで買った。全部で1週間ほどの行程を組む。


ネパール語で「パニ」とは水を表しているのだが、

この地域にはゴレパニをはじめ、

「タトパニ」、「タダパニ」など共通してこれがつく地名が多い。

川や温泉がいくつもあり、それにちなんでいるのだろう。


だから今回は、長かった「シャワー生活からの逃避」という目的もあったりする。






けれども今はモンスーン前。

人生前半をかけて証明された雨男の実績。

ついでに「パニ」には「雨」という意味も(笑)


本当は心の隅に不安はあるけれど、どうしようもない事は

あえて考えないことにした。そう、考えてはいけない。



温泉にロッジに、山の名前。

ガイドブックを読みながら、

遠足を待つ子供のような気持ちになる。




Googleマップは、使えません。





2012年4月20日金曜日

デヴァナガリ文字で、書いてみる


今更だがPCの中に、ネパール語やヒンディー語で使われる

「デヴァナガリ文字」と呼ばれるフォントを入れた。

あの、上を一本の横棒でつないでいる不思議な文字だ。

物干し竿にぶら下がる洗濯物に見えなくもない。


もともと読める気も書ける気もしなかったあの文字を

今やPCで打とうという気持ちになったのだから、

これは大きな前進だ。






Googleにアクセスし、Google IMEをインストール。

言語バーの左端にある“JP”の文字をクリックすると、

“NE”(ネパール語)との切替えができるようになる。

切替える。

発音どおりローマ字で打つと、変換候補が次々に現れるらしい。




नमसुते`...`ナマステ。おお、打てる!当たり前だけど、小さな感動にときめいてしまう。

(最初に“ナマステ”を打つ自分にもちょっと笑う)

その瞬間、隣の家の雄鶏が大声で鳴いた。


調子に乗る。

सन्चै हुनुफुंचा`? एकुदमु राम्रो! (元気ですか? めっちゃ元気です!)


धेरै रमैर छा...(た、楽しい...)

काना खानुबायो? (ごはん食べた?)



母音記号とか綴りとか、多分間違っていると思うけれど、

聞いた言葉をローマ字打ちすれば、それらしい文字列が出て

ちゃんと話しているような錯覚を味わえる。


最近ちょっと停滞していたから、

しばらくこれで遊びながら覚えようと思う。



錯覚でもいい。少なくともそういう気持ちになった、ということで。



新居の屋上から。あの山の名は、“ナガルジャン”、と3階の友人が教えてくれました。




























2012年4月12日木曜日

雲を見上げて



続いた雨が大気を洗い、

久しぶりに青い青い空が丸1日。

夕方、屋上の風に吹かれながら麦酒を飲んだ。

クリケットをする子供たち。野菜売りのおじさん。のんびり歩く牛の親子。

雲の大きさに、言葉もなく



今日はビクラム暦*でいう1年最後の日。明日から新しい年が始まる。


入道雲を眺める、大晦日。







*ビクラム暦:ネパールで使われる公式の太陽暦で、一般的にはこちらが優先される。
今日は2068年チャイットラ30日。明日からは2069年バイシャク1日だそうな・・・。




2012年4月11日水曜日

雨上がりは


乾季の終わりまで、あとひと月ほどあるけれど

ここ一週間は、夜ごとにずいぶん雨が降るのが常だ。


でも朝には必ずからりと晴れて、やわらかい風に埃もなく、

大気が洗われて少し穏やかなカトマンズになる。


静けさは束の間ですが・・・





















最近の日課は、起き抜けに屋上に上がって山を観ることだ。

盆地のカトマンズを取り囲む緑の山々は、“パハール”と呼ばれ、

その向こうに時々姿を見せる白い山々が、“ヒマール”、つまりヒマラヤ山脈。

はるか遠くにありながら、その巨大さで

ヒマールはパハールと交互に並んでいるようにも見えるのだ。



あと30分もすれば、霞で見えなくなります。



寝ぼけたまま望遠レンズがぶれないようにホールドするのはちょっと大変だ。

やや冷たい空気にも、少しだけむせそうになる。


けれど静かな朝に、息をこらして

シャッター音を鳴らすひとときは、

ここのコーヒーと同じくらい、美味しい。


















2012年4月8日日曜日

交渉ゲーム

マイカーのない暮らしだから、

荷物の多い日や疲れた日にはタクシーを使う。


一応はメーターの法定料金なるものはあるらしいが

それに応じてくれた運転手は、今までにたった1人。

やはり毎回交渉がいる。ちょっとしたゲーム感覚だ。


まず顔の前で手を合わせて、笑顔で空気をほぐしながら
運転手が目的地を知っているかどうかを訊く。


この時、本当は知らないのに「知っている」と言う人が多く、
それを信じると遠回りされた上に
その分の料金まで上乗せされる可能性が高い。

無数にある、“カトマンズの不条理”のひとつだ(笑)。

いくつかの近隣の地名も並べながら、彼の目をしっかり見て(笑)確かめる。


次に料金を提示しあう。

運:「ティンセイパチャス(350Rs)」

相手が外国人だと見ると、相場に少なくとも100Rsは乗せてくる。




すぐには答えない。

彼の目をじっと見て数秒すると、ふっかけた事に気付かれたと
目を逸らしはじめるのだ(笑)。

そこで、

「エクセイパチャス(150Rs)!」と僕。

本当は200でもいいけれど、そのちょっと下から始めるのが良い。


当然うんざりした顔で首を振る。

こっちも同じ動作と顔で拒む。
そして車の「前方」に歩き出す。毅然と背中を見せるためだ。


ここで背後からクラクションが聞こえれば、ひとまず勝ちだ。
運転手は諦めた顔で「乗れ」と言う。




でも目的地が近づいたころ、やっぱり料金が不満な彼は次々不平を並べだす。

「こんな中まで入る道だったらあと50Rsだ。」
「ここから客は拾えないから帰りの分も払ってくれ。」
「日本は仕事がたくさんあるんだろ」
しまいには「俺には子供が5人もいるんだ。」などと言いだす始末。

アクセルをふかしては不機嫌をアピールする。



苦笑しつつも彼の肩をたたき、

「そうかそうか大変だね。ネパールはガソリンも高いもんねぇ。ありがとねぇ。」


運ちゃんを優しくなだめながら、

結局僕は辛い空気に幾らかのチップを乗せてしまうのだ。

負けた。




交渉のゲームは、降りるときまで、終わらない(笑)


うなだれる、中央分離帯。










































2012年4月2日月曜日

ナガルコットからサクーまで

山を歩きたくなっていたところで

日本から友人たちが来る。

日程を長くとれないのはいつものことだから、

ナガルコットからバクタプル近辺のサクーという村まで、

なだらかな散歩道を“トレッキング”と称して出かけた。

車でカトマンズから2時間とかからない。



あいにくの曇り空と黄砂のような霞みで、

待望のヒマラヤは見れずじまい。

そのぶん途中の村や人々、風景にレンズを向けた。


地味な夜明けから始まる1日(笑)




















昔乗ってたランクルBJ44V。埃だらけの現役。

























わかりやすい道なのに、

時折どちらへ行けばいいか迷うところがある。


そういう時には村の子供たちが現れて、こっちこっちと招いてくれる。

助かったと思うも、招いたその手でしっかりおやつをねだられた(笑)




絵に描いたような・・・





















笑う膝をかかえつつ、麓のバス停まで3時間。

再来週のアンナプルナに向けて、良い演習となった・・・のだろうか。















2012年4月1日日曜日

カトマンズの“鳥説”- インドハッカ

朝コーヒーを飲んでいる時間に

キッチンの前のアボカドの木に、

毎日いろいろな鳥が来る。

その中でも一番よく見たのは、「インドハッカ」。

初めは野生の九官鳥かと思った。



早よこっち来いって!と言っているかどうかは知りません。




ムクドリの一種で、日本のそれと同じく、つがいや群れで行動している。

1羽がモタモタしていると、群れの皆が振り返ってそれを気にする様子が印象的だ。


我が家の壊れた換気扇の排気口で巣作りを始めたので、

妻がいつも中から窓を叩いて追い払おうとしていた。

すぐ横のベランダの縁に止まって、洗濯物を汚してほしくなかったらしい。

けれど結果は、鳥の勝利。



やがて換気扇の管の中から、かわいい雛たちの声が聞こえてきた。