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2012年9月13日木曜日

季節は2つ





四季のある日本にいると、

季節の変化の“兆し”に触れる機会が、年に4度はあるわけで、

それに対する直感も経験も養われるようだ。

ちょっとした朝晩に冷えを感じて、もうすぐ寒くなりそうだとか

日差しの柔らかさを見て、春も近いだとか。

それなりに予想は当たり、心と身体はそれに備える。







雨季の終わりが近い、と自分なりに感じ始めてしばらく経つのに

いまだ雨は続く。

カトマンズに住むようになってからは、勘も鈍っているようで、

あまり予測が当たらない。

ちょっとした変化をわざわざ捉えてみても、

大して意味がないようで。




では数値化しよう、とカトマンズの天気図をネットで探してみた。

そして気圧の表示を2度、見直す。



「862.2HP」 



・・・この国の表示はどうかしているのかと思ったが、

冬場の気圧も遡れるので見てみると、「1018HP」あたりで推移している。普通だ。




これでは最近沖縄を通った巨大台風の中心気圧よりもずっと低い。

海がないからいいけれど。



調べてみると、西アジアにできる低気圧と、

カトマンズの標高(約1400m)とが相まって、こんな数値になるらしい。




僕は毎日、強烈な台風の目の中で暮しているのか。

急に人間の身体の適応能力に感心し、

自分の手を見つめてしまう(笑)




雨季か、乾季か。季節は2つ。


細かい変化に気付くような風流はないけれど、

この気圧が少しずつ上がって、屋台の果物がまた変わる時、

乾季に向かっていることを、感じるのだろうか。




そういえば、虹も多いこの頃。








今の旬はザクロ、リンゴ、そして梨。
バナナはいつでも。










 

2012年9月8日土曜日

街のこと - リングロード





京都は「碁盤の目」と言われる四角い街。

カトマンズは、なんとなく「卵型」。


その形に沿って全長約27kmの「リングロード」と呼ばれる道が走っている。

幅は大きいところで40mくらいだろうか。

名前の通りのリングだから、走り続ければいつか同じところに戻って来れる。

つまり、このリングロードをたどっていくと、カトマンズの大抵どこにでも行けてしまう。

もちろんショートカットは幾らでもあるけれど。



リングロードを南北縦に割る、通称「5番道路」があり、


その道とリングロードの最北の交点は、「チャクラパット」*と呼ばれている。


南東角からすこし南に巨大なアメリカ大使館、

北東にはカトマンズきっての大型スーパー「バトバティーニ・スーパーストア」がある。

カトマンズでは知らない人はいません。
ホコリまみれの看板ですが。
http://www.gosur.com/en/point/99054/




市内各方向にバスが発していて、いわゆる「交通の要衝」と言える場所だ。

西に行けば、お馴染みの世界遺産、仏塔「スワヤンブナート」(スウェンブー)、

東に行けばトリブヴァン国際空港方面へ。 

やがて2つの道はリングロードの南端、「パタン」という街で出会う。

市内の要所要所で、大きな道と交差しては、

それぞれに繁華な商業地区を作り出す。






車線はいくつ?という問いはほぼ無意味で、

速い奴らが前に出るデッドヒートがいつもある。


車検という概念のないエンジンからは真っ黒な煤煙、

弱い路面と未舗装の路肩からいつも凄まじい埃が舞い上がる。


挑発か威嚇か、クラクションの応酬に目がくらむ。

微妙な左右への蛇行にアップダウン、突如現れる大きなへこみに、

バスの乗客としては一瞬たりとも気は休まらない。

降りた時の安堵感といったら。



そして悠然と歩く牛たちに、交通社会のリズムは乱される(笑)




Google マップの色合いは世界各国同じだけれど、

現場はかなり、シビアなのです。

夕方ラッシュのチャクラパット。
バス、車、バイク、自転車に歩行者ときどきリキシャ。
ホコリ、ほこり、埃。
何とかならないものか。







我が家の屋上から。
画面中央、左右に走る木々が、リングロード路肩の植え込み。




*ネパール語で“リング(輪)”は“チャクラ”、“ロード(道)”は“パット”。
 

 つまり、リングロードをネパール語で「チャクラパット」と言う。

 正式名称は「ナラヤン・ゴパール・チョーク」。

 国民的歌手にちなんだ名前とか。
 

  

 リングロードの中でも代表的な交差点(チョーク)であることがその所以と思われる。
 

 京都の長い河原町通りも、四条、三条あたりを「かわらまち」と呼ぶように。

 
 

 
 
 

 

 


















2012年9月5日水曜日

アンナプルナの山々に5




宿の皆が食事を終えるころ、

厨房の中でネパール人たちが

ネパールの地酒ロキシ―を片手に盛り上がる。



明日の朝食メニューを見に行っただけの僕は、彼らに即座につかまって、

自家製のロキシーをあてがわれて座る。

少し荒削りな米焼酎のような味。でもやわらかくて香ばしくて、すぐに好きになった。



ディパックは皆の真ん中で楽しそうに話し、

時に踊るような大きな身振りとオチで笑わせる。



うまくいっていないビジネスをネタにしているようだ。

心から楽しそうに。

そんな気持ちとみんなの笑う声が部屋に充満していて、

冷え込むヒマラヤの夜もここだけは暖かく、ゆっくり時間が流れる。


各国のトレッカーたちのリラックスもいろいろで、

ドイツの青年たちは素早くベッドにもぐったのか、部屋から物音ひとつもしない。



アメリカ人カップルは、屋外のテーブルで二人、温かいロクシーを飲みながら、

「ショウチュウに、ウメボシいれて飲みたい」などと言っている(笑)

日本で住んでいたことがあるとか。



ネパール人たちはお酒がすすんでくると、なぞなぞを言い合ったり、

おバカな話でゲラゲラ笑い、大盛り上がりするのが好きだ。



ひとしきり笑い、明日のコースを確かめあうと、さすがに眠気がやってきた。

明日は朝の7時発。寝よう。



その数秒後。

2階に上がる階段で、

満天の星に、息をのむ。



宿の庭で。

  
 


石の屋根瓦。留めるための楔(くさび)まで石でできています。
 

宿から見下ろすと、ミュール(馬とロバの掛け合わせ)
周りが静かだから、2階まで草を食む音がはっきり聞こえます。