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2012年3月24日土曜日

引っ越しと、出会い。

礼金、敷金、保証金などの仕組みがない。


良い物件にいつもアンテナを伸ばしておくと、意外に安く家を変えては

暮らしの質を向上させることができる。


今回の引っ越しで、家賃はおよそ半額になった。

部屋の数は1つ減ったけれど、

風通しのいい空間と、見晴らしの良い屋上を手に入れた。

条件が良ければヒマラヤを望める。



ただ、多くのアパートには絨毯や、インターネットのアンテナ、

湯沸し器の移設、停電バックアップ装置の取り付けが1から必要だったりして、

数日間はいろんな業者に作業をしてもらうことになる。


そういう中で職人たちと出会う機会はとても大切だ。

作業に立ち会い、一緒にチヤを飲み、また仕事を依頼できるかを見極める。

何かが起きても、信頼できる職人のグループを持っていれば、

今後も何かと安心だからだ。




今回の引っ越しで出会えたのは、気のいいカーペット職人の若者、ゴビンダ。

公休の土曜日を割いて仕上げに来てくれたが、

仕事が遅れたからと、チップまで辞退するプロ意識。

ネパールでは異例のことだ。


でも代わりに渡したココナツクッキーだけは、

嬉しそうに受け取ってくれた。





路上に売られる、ベッドカバー。
木漏れ日が当たる。







2012年3月17日土曜日

夕暮れは

喧騒と活気がトレードマークの街にも、

午後3時を過ぎて西日が差せば、いくらかホッとする時間が来る。

そういう時に街を歩いて、何となくシャッターを切るのが最近の楽しみだ。



暖かい西日に・・半ズボン?


網の目のような通りに、コンクリートの4、5階建てが並ぶ街は、

日陰の時間も結構長い。


だから暖かい西日が斜めに差し始めると、皆の顔も緩んで見える。

露店のディディ(お姉さん)、チヤ屋のダイ(年配の男性)、

親の仕事が終わるまで、遊びながら待つ子供たち。


残った野菜はこのカゴで持って帰るようです。














お母ちゃん待ってんねん。










ここに止まる余地なし・・・

























夕風が顔に当たると、強めの日差しも心地よく冷える。



その同じ風が、通りの巨木を
鳥の群れをのせたままゆっくりと何度も揺らしている。

ゆうっくり、大きく。


時間の流れを変えるのは、

この風と木と、人々の表情、なんだろうか。



ビールを買って、家路についた。

















2012年3月16日金曜日

“アウンダイチャ”


バスの停留所。

こちらに近づいてくるバスの姿が見え始めると、

横にいるネパール人たちが口々に、

“アウンダイチャ、アウンダイチャ!” 



レストランで、「注文したけど、まだか?」とウェイターに尋ねると、

“アウンダイチャ、アウンダイチャ。”



もともとの動詞は「アウヌ(来る)」で、

文法的に言えば主語が3人称で単数で、現在進行形でこんな形になる。


だからいずれの場面でも「今こっちへ向かっている」、「もうすぐ来るから」という意味になる。




今日の午後、またガス屋に行ってみた。

15㎏ほどの赤いタンクに入ったプロパンガスは、

ネパール国民の台所に欠かせないのだけれど、

この2、3か月は深刻な供給不足で結構みんな困っている。

だましだまし使う我が家もなんとか手に入れたいと思い

ガス屋通いを続けているが、何度振られたことか。


町で誰かが中身の入ったガスを運んでいると、

ちょっとした羨望の的にさえなってしまう、今日この頃なのだ。



しかし今日は、違った。僕の顔を見るなり、店主が言った。

”アウンダイチャ” 


“え!?アウンダイチャ?”

店主、(首を何度も傾けて)”アウンダイチャ。”

僕はにわかに信じられず、別の店員にも“アウンダイチャ?”と確かめる。

店員、“アウンダイチャ!” と笑って答える。そして座って少し待てと。


めでたく我が家には、ガス満タンのタンクが到着し、

妻と二人で大喜びだ。 

誰かが言っていたが、ネパールでは幸せのハードルが低い(笑)


ちなみにアウンダイチャしているものが到着すると、“アヨ”になる。まあいいか。


この汚いタンクが、
本日現在、我が家の家宝(笑)




















果てしなく変化するネパール語動詞の語尾活用。


日常拾い上げる無数の言葉に、なんとか文法の理屈をかぶせては

自分なりに納得、整理するようにしているけれど、

目と耳と心と、時には身体全部で覚えるのが一番いい。

多分もう、“アウンダイチャ”だけは忘れない(笑)








































2012年3月9日金曜日

首をかしげて


言語がわからない間、身振りの役割の大きさは尋常ではない。


相手の目や口の動き、声の大きさから、
何とかして情報を読み取ろうとする習慣が身についたし、
コミュニケーションに詰まると、相手の顔に穴があくほど見つめる癖が。

けれどここへ来て一番戸惑ったのは、
ネパール人が(恐らくインド人も)肯定の返事をするときに、
頷くのではなく、首をかしげる動作をすることだった。

何度も続けてそうするから、首を振ってNOと言っているように見えるのだ。
あるいは、「どうかなぁ?」と迷っているようにも。


交渉成立まであとひと押し、と思っても、NO。
写真を撮ってと頼んでも、NO。
このバスでどこどこに行けるかと訊いても、NO。

その後で、頼んだ事を全部やってくれるので、こちらは一瞬ぽかんとなる。
今、だめって言ったよな?と。

最近はようやく慣れてきたけれど

今度は自分がやってみたくなり、空いた時間に一人で練習してみる。


・・・「ぐき。」

まだまだ長い道のりだ。


スウェンブーの子ザル。
何かに夢中でこちらに気付かない。











2012年3月5日月曜日

バーバー“路傍”



道端のちょっとした隙間に店を構える人は多く、それを規制する法もなさそうだ。



その中には、モノを広げて客を待ち続ける行商もいれば、

靴修理に裁縫といった、手に職を持つ人たちも沢山いる。



タメルにあるこの「路傍理髪店」もそのひとつだが、

そこへ行けば必ずと言っていい確率で、満員御礼の繁盛店だ。客は当然1人だけれど。



暖かい日差しとゆるい風の中での散髪。じつに気持ち良さげだ。

客はいつも目を閉じて、おとなしく髪を切られている。

靴をきちんと揃えて脱いで(笑)。







鏡の有無も気にならず、ただひと時の恍惚に身を委ねる・・・。


このくつろぎを邪魔しないためだろうか、

いつも話好きのネパール人なのに、お互い黙っているのが面白い。


気候のため、コンクリートでできた建物の中はひんやりと寒い。


日中人々はいつも日差しを探して、できる限り日光を浴びようとしているようだ。


そんな時間を無駄にせず、散髪に使う。


やっぱり彼らは、目の前の隙間を、逃さない。



2012年3月3日土曜日

テーブルの正体

とある食堂の前で、ある日数人の男性が何やら工事を始めたので、

幾日か興味を持って見ていたら、何やら大きなセメントのテーブルが出来てきた。

巨大な下駄の形をしている。


ああ、屋外テーブルか、なかなかオツなものを造る食堂だ。

なんだか分厚いけれど、まあこっちスタイルなんだろう、と早急に結論を出してしまい、

しばらくは忘れていた。




数日後。

人だかりに歓声が聞こえたので、

テーブルの事を思い出し、覗き込んでみた。

その正体は、とても立派な屋外卓球台。

きちんと色が塗られて、ネットまで張られている。



小さな子供から大人まで、大盛り上がりで楽しんでいて、しかもなかなかの腕前だ。

時にはスピンのかかったラリーの応酬も。

ただ難点は、風が吹くとゲームがそのつど台無しになる事(笑)。



少し注意して街を観ると、

実は市内の各所に、同じような“草”卓球台があることと、

子供も大人も(笑)道で本当によく遊ぶ国だという事にも改めて気づいた。


こんな卓球台を造っているのは個人なのか、政府なのか、

外人の僕が気にする必要はないけれど、

街中の「娯楽施設」がきちんと機能していることは、間違いない。




これ一台で、街が賑やか(笑)








2012年3月2日金曜日

大きな自転車で


衛生上、水道水を飲むことができないネパールでは、

ボトルに入った水を届けてもらうのが常だ。

我が家にいつも届けてくれるのは、放課後に近所の八百屋で働くビルジュ君。


授業が終わった4時頃から店の手伝いにかかり、

足もあんまり届かない大きな自転車に20L、つまり20kgのボトルを括り付け、

3階の我が家まで、一生懸命に運んでくる。

配達帰りのビルジュ君。




まだ小学生ぐらいだろうけれど、

仕事に取り組むときはいつも静かで真面目な彼だ。


この前も夜8時ごろに、閉店の片付けで野菜のバスケットを重ねる彼を見かけたが、

店の灯りに照らされた横顔は、店主かと思う程に大人びている。


チップ代わりのチョコバーに、白い歯を見せて笑う彼はやっぱり幼い。

彼が戸口に来るたびに、

妻と一緒にほんの少し、癒されている。