ここに来た時はいつも、
自分が他所から来た人間であることを強く意識させられる。
ネパールのイミグレーションオフィス(移民局)。
ビザ更新や切り換えのために、これまで数回訪れている。
特に理由もなく“来週また来い”とか、
長時間並んだのに、目の前でカウンターが閉じるとか、
どんな理不尽を目にしても、ここではみんな大人しい。
とにかくビザを貰わなくてはいけないから。
やや言葉をはばかりながら言うと、
残念ながらネパールの役人さんたちの多くは、
正直さやプロ意識をすっかりお忘れになっていて(笑)、
“居住”という最低限度の権利を望む外国人たちに、
結構大胆に正規料金「以外」のものを公然と要求したりする。
これだけ払えば順番を早くしてあげるよ、とか、
書類の不備も見逃してあげるよ、など
座っているだけで、彼らにとってのいわゆる“チャンス”が
いくらでもやってくる。
ある国の人たちは、微塵の躊躇いもなくそれに応え、
輝くビザのシールにオフィサーのサインを手に入れる。
行列する皆が見守るなか、えんじ色のパスポートを鞄に仕舞い、
彼らは真っ先にここを去っていく。
誰かが抗議をする訳でもなく、
いくらかの羨望と失望が入り混じった空気が流れるだけだ。
ネパールとなると、人種のバラエティに加えて
そのメンツもユニークになる。
自分探し系の若者はもちろん、
腕っぷし屈強な山岳おじさん系、
トレッキングを続ける、ブロンドのお洒落な山ガール(古い?)系、
白くて長い髭を蓄えた、よれよれのタンクトップのヒッピー仙人系。
あらゆる人種の、これまたいろんなタイプのヒトビト。
その全員が一様に大人しく、時に歯をくいしばり(笑)、
印象よく笑顔を浮かべようとする絵はなかなか得難いものだなぁ、
などと考えながら、ここでの憂鬱を紛らわしている。
悲喜こもごもの、移民局 |