ページ

2012年10月21日日曜日

イミグレの憂鬱





ここに来た時はいつも、

自分が他所から来た人間であることを強く意識させられる。

ネパールのイミグレーションオフィス(移民局)。

ビザ更新や切り換えのために、これまで数回訪れている。




特に理由もなく“来週また来い”とか、

長時間並んだのに、目の前でカウンターが閉じるとか、

どんな理不尽を目にしても、ここではみんな大人しい。

とにかくビザを貰わなくてはいけないから。




やや言葉をはばかりながら言うと、

残念ながらネパールの役人さんたちの多くは、

正直さやプロ意識をすっかりお忘れになっていて(笑)、

“居住”という最低限度の権利を望む外国人たちに、

結構大胆に正規料金「以外」のものを公然と要求したりする。



これだけ払えば順番を早くしてあげるよ、とか、

書類の不備も見逃してあげるよ、など

座っているだけで、彼らにとってのいわゆる“チャンス”が

いくらでもやってくる。





ある国の人たちは、微塵の躊躇いもなくそれに応え、

輝くビザのシールにオフィサーのサインを手に入れる。

行列する皆が見守るなか、えんじ色のパスポートを鞄に仕舞い、

彼らは真っ先にここを去っていく。




誰かが抗議をする訳でもなく、

いくらかの羨望と失望が入り混じった空気が流れるだけだ。






ネパールとなると、人種のバラエティに加えて

そのメンツもユニークになる。


自分探し系の若者はもちろん、

腕っぷし屈強な山岳おじさん系、

トレッキングを続ける、ブロンドのお洒落な山ガール(古い?)系、

白くて長い髭を蓄えた、よれよれのタンクトップのヒッピー仙人系。




あらゆる人種の、これまたいろんなタイプのヒトビト。




その全員が一様に大人しく、時に歯をくいしばり(笑)、

印象よく笑顔を浮かべようとする絵はなかなか得難いものだなぁ、

などと考えながら、ここでの憂鬱を紛らわしている。





悲喜こもごもの、移民局



           








 

2012年10月14日日曜日

カトマンズで、石窯ピザを



用事が終わり、いくらか時間があったので、

前から気になっていたイタリアンレストラン “Roadhouse Cafe” に行ってみた。


ウォルナットか、落ち着いた色の床と調度品に

ここがネパールであることをちょっと忘れてしまう。


客のほとんどは欧米からの人々で、

街中よりもリラックスした顔で、もぐもぐ食べながら

一生懸命英字新聞を読んでいる。

彼らにとっての、“普段” を味わっているように見える。





バーカウンターも




日差しを歩いて疲れたところで、

冷たいビールを頂いて、席からよく見える石窯で焼いたピザが出てくる。



バジルの香りもしっかり。香ばしいチーズにコシのあるピザ生地。

オリーブの実に詰まった酸味も、快い。


ソースの味も、嫌味のない自然なものだ。


街の食堂で「ピザ」と銘打ってあるそれとは

全く違う、本当に美味しいマルガリータ。



蒸したチキンを削いで、新鮮なトマトや青野菜と巻いた、

“チキンラップ”なるものをドレッシング風のソースにつけて齧る。




歩いたあとのビールは、こたえられない。

焼きたて、直径30cm。




この国で必ず入る香辛料とは

一切関係のないひと時。


たまにはいいもんである。




後発国であっても、ここは人口300万の首都。

もちろん日本ほどではないものの、

外国人を楽しませるものは結構何でも揃っている。







13%の税金も、もれなくついてくるけれど。




これを見ながら食べるのも、楽し。











 

2012年10月12日金曜日

鳴いているのは




カトマンズには野生のリスが街中にふつうに住んでいて、

時々電線や木の枝をすばやく走っているのを見かける。



一度始めると結構長い時間、鳴き続ける。



でも実を言えば、最近までそれがリスの声だとは全く知らず、

どんな鳥が鳴いているのか何とか見届けたいと思っていた。



ある日の午後にも、声が聞こえたから、

その木を改めて、凝視してみた。


1秒ほどの間隔を置きながら「キャン!・・・キャン!」という声。

それと、大きな尻尾がシンクロしながら揺れているのが見えた。


望遠レンズで覗いてみれば、その正体はリスだったという訳だ。





別の場所にいる仲間への呼びかけか、異性へのアピールか。

その目的はわからないけれど、

距離にしてここから30か40mもあるのに、

小さい身体から出る甲高い音は、とにかくしっかり届いてくる。



餌付けなんかは、できるのだろうか。

チャンスがあれば今度はもう少し近くで、撮影してみたい。




鳴くたびに、尻尾が上に大きく上がります。
 











 

2012年10月3日水曜日

ハジュール!




この国にきて以来、「ハジュール」という言葉を聞かない日はない。




定義はとても難しい。


名前を呼びかけると、相手は答える。「ハジュール!(はい)」


「元気ですか?」 「ハジュール!(元気です)」

電話を取って最初の一言、 「ハジュール!(もしもし)」



「いい天気ですね。」  「ハジュール!(そうですね)」

「この先をこう行って・・・」 「ハジュハジュ(はいはいなるほど)」 

「それから右に曲がって・・・」 「ハジュール(了解)。ダンネバー。」という相槌にも。



相手の言う事が聞こえなかったときに、 「ハジュール?? (いま何と?)」と訊き返し、


店先で 「ハジュール!(誰か)」と呼びかければ、中から店主がやってくる。





意味を持つ言葉であると同時に、合いの手や、記号のようでもある。

独特の機能を持った言葉だ。



使い方を覚えた僕は、妻への返事に最近これを使っている。

仰せつかる用事に、いろいろな思いを込めながら(笑)。



「クロちゃん!」


「ZZZ・・・ハジュール?」