バスの停留所。
こちらに近づいてくるバスの姿が見え始めると、
横にいるネパール人たちが口々に、
“アウンダイチャ、アウンダイチャ!”
レストランで、「注文したけど、まだか?」とウェイターに尋ねると、
“アウンダイチャ、アウンダイチャ。”
もともとの動詞は「アウヌ(来る)」で、
文法的に言えば主語が3人称で単数で、現在進行形でこんな形になる。
だからいずれの場面でも「今こっちへ向かっている」、「もうすぐ来るから」という意味になる。
15㎏ほどの赤いタンクに入ったプロパンガスは、
ネパール国民の台所に欠かせないのだけれど、
この2、3か月は深刻な供給不足で結構みんな困っている。
だましだまし使う我が家もなんとか手に入れたいと思い
ガス屋通いを続けているが、何度振られたことか。
町で誰かが中身の入ったガスを運んでいると、
ちょっとした羨望の的にさえなってしまう、今日この頃なのだ。
しかし今日は、違った。僕の顔を見るなり、店主が言った。
”アウンダイチャ”
“え!?アウンダイチャ?”
店主、(首を何度も傾けて)”アウンダイチャ。”
僕はにわかに信じられず、別の店員にも“アウンダイチャ?”と確かめる。
店員、“アウンダイチャ!” と笑って答える。そして座って少し待てと。
めでたく我が家には、ガス満タンのタンクが到着し、
妻と二人で大喜びだ。
誰かが言っていたが、ネパールでは幸せのハードルが低い(笑)
ちなみにアウンダイチャしているものが到着すると、“アヨ”になる。まあいいか。
この汚いタンクが、 本日現在、我が家の家宝(笑) |
果てしなく変化するネパール語動詞の語尾活用。
日常拾い上げる無数の言葉に、なんとか文法の理屈をかぶせては
自分なりに納得、整理するようにしているけれど、
目と耳と心と、時には身体全部で覚えるのが一番いい。
多分もう、“アウンダイチャ”だけは忘れない(笑)
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