公共の乗り物、例えばバスや電車に乗る場合、
後から来た人は先に座った人と適度な距離を取って、
等間隔に席を埋めていくのが常だ(と日本から来た僕は思っている)。
テンプー(電動3輪タクシー)に乗っていると、そんな常識はすぐに破られる。
座席の入り口は最後尾にあるのだが、冗談かと思うほど狭い。
それにいくらか車高があるので、腰の曲がったご老人、その他多くの方々は
躊躇いもなく、すでに座っている人の膝に手をかけてヨイショと乗り込む。
時には置いたその手を軸に反転して、ぴったりと横に座る。
まだ空席があるというのに(笑)
小さなテンプーはあっという間に満席。
今起きたことを消化する前にモーターは唸り、走り出す。
みんな、人との距離が近い。
ある日、珍しく乗客が僕一人だけの事があった。
ガタガタと揺れる事に変わりはないが、
ゆったりとしたスペースで、心地よく風に当たっていると、
遠くから一人の乗客が、乗車の意志を表しつつ走ってきた。
一番後ろの席に座っていた僕は、しばしのくつろぎの終わりを覚悟する。
ところが彼は助手席側のドアをコンコンと叩き、運転手はドアを開け、素早く隣に座らせた。
するとその乗客は、今日は暑いな、明日のストは中止だ、仕事を休めなかったから
仕方なく出て来た、などと矢継ぎ早に運転手に話しかけ、一方的にしゃべり始めた。
特に知り合いという訳でもなさそうだが、運転手はにこやかにそれを聞き、
時折合いの手を挟んでいる。
あっという間に、サティ(友達)なのだ。
ネパールの国民的歌手、ナラヤン・ゴパールの歌に、「エウタ・マンチェコ(たったひとりの人の~)」
という歌がある。
つまり、「たった1人の人との友情や愛が、人生に何と大きな違いをもたらすのだろう」という
趣旨なのだが、この歌をネパールの人たちは心から愛し、時に涙する。
家族を、友人を、深く愛する彼らの心をよく表したそんな歌だ。
そういう訳かどうなのか、この国では初対面の人とも普通に会話をする文化があるという。
乗り物に乗ったなら、思ったことを隣の人に語るのも、別に珍しくはない。
政治のこと、水のこと、暮らしのこと、そして家族のこと。
話したい時、空いた席を避けて誰かの近くに座ることも、たぶん選択肢のひとつなのだろう。
みんな、サティが必要なのだ。
日本の電車で、隣の人に話しかける事のハードルがこんなにも上がったのは、
いつからだろう。
そう考えていると、誰かがまた膝に手をかけて、乗り込んできた。
後から来た人は先に座った人と適度な距離を取って、
等間隔に席を埋めていくのが常だ(と日本から来た僕は思っている)。
テンプー(電動3輪タクシー)に乗っていると、そんな常識はすぐに破られる。
座席の入り口は最後尾にあるのだが、冗談かと思うほど狭い。
それにいくらか車高があるので、腰の曲がったご老人、その他多くの方々は
躊躇いもなく、すでに座っている人の膝に手をかけてヨイショと乗り込む。
時には置いたその手を軸に反転して、ぴったりと横に座る。
まだ空席があるというのに(笑)
小さなテンプーはあっという間に満席。
今起きたことを消化する前にモーターは唸り、走り出す。
みんな、人との距離が近い。
ある日、珍しく乗客が僕一人だけの事があった。
ガタガタと揺れる事に変わりはないが、
ゆったりとしたスペースで、心地よく風に当たっていると、
遠くから一人の乗客が、乗車の意志を表しつつ走ってきた。
一番後ろの席に座っていた僕は、しばしのくつろぎの終わりを覚悟する。
ところが彼は助手席側のドアをコンコンと叩き、運転手はドアを開け、素早く隣に座らせた。
するとその乗客は、今日は暑いな、明日のストは中止だ、仕事を休めなかったから
仕方なく出て来た、などと矢継ぎ早に運転手に話しかけ、一方的にしゃべり始めた。
特に知り合いという訳でもなさそうだが、運転手はにこやかにそれを聞き、
時折合いの手を挟んでいる。
あっという間に、サティ(友達)なのだ。
ネパールの国民的歌手、ナラヤン・ゴパールの歌に、「エウタ・マンチェコ(たったひとりの人の~)」
という歌がある。
つまり、「たった1人の人との友情や愛が、人生に何と大きな違いをもたらすのだろう」という
趣旨なのだが、この歌をネパールの人たちは心から愛し、時に涙する。
家族を、友人を、深く愛する彼らの心をよく表したそんな歌だ。
そういう訳かどうなのか、この国では初対面の人とも普通に会話をする文化があるという。
乗り物に乗ったなら、思ったことを隣の人に語るのも、別に珍しくはない。
政治のこと、水のこと、暮らしのこと、そして家族のこと。
話したい時、空いた席を避けて誰かの近くに座ることも、たぶん選択肢のひとつなのだろう。
みんな、サティが必要なのだ。
日本の電車で、隣の人に話しかける事のハードルがこんなにも上がったのは、
いつからだろう。
そう考えていると、誰かがまた膝に手をかけて、乗り込んできた。
空席には目もくれず、助手席に滑り込む |
今や無二のサティ、ダンプ |
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