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2012年8月8日水曜日

アンナプルナの山々に4



ティルケドゥンガ(ティケドゥンガとも)までの道のりは、

比較的整備の行き届いたトレイルで、

少しばかりの体力と、初日特有の興奮があれば、乗り切れる。




オタマジャクシの少年に別れを告げると、

道の勾配が少しついてきた。

川も眼下に流れ出す。



砂利道はやがて石畳に、時折階段のようになり、視界の両脇には

濃い緑色の棚田が続く。

急斜面に、小刻みに作ってあるから

西日が差してできた影が、くっきりと縞模様になって見える。

目に癒し。



途中に茶店がいくつもあり、


さっき追い抜かれたグループの休憩を横目に、また僕らが前に出る。


次の休憩で、抜かれる。


お互い何となく顔見知りになって、軽く手をあげて挨拶をする。



そんなことを幾度と繰り返して、昼の3時頃だろうか、

ちょうどいい高さの石のベンチに腰かけていると、野球帽をかぶった小柄な男性が近づいてきた。


彼の、笑顔でゆっくりとした話しぶりに、引き込まれる。




今日はどこから来たんだい?どこまで歩く予定?




たどたどしくネパール語で答えると、彼は一層笑顔になって、

いろいろな事を訊ねてきた。


アンナプルナは何回目?

日本にはこんな山はあるのかい?山登りをする人は多いのかい?

ベースキャンプへは行くのかい?

この旅の目的地は?


矢継ぎ早なのに、ゆったりとしているのはなぜだろう。

気が付くと、ずいぶん長く彼と会話を続けていた。




彼は言う。

この先のヒレまで行くと日が暮れるし、

このあたりは景色もいい。

今日もしこの辺で泊まるなら・・・とにこやかに、僕らの背後にあるロッジを指さした。

「僕の、宿なんだ。僕の名前はディパック・シェルパ。」





こんな呼び込み、はじめてだ。長い会話のその後に、結論が待っていた(笑)。

陽は傾いて、涼しい夕風が吹いている。

断る理由はひとつもなくて、妻と顔を見合わせて笑った後は、

彼の後について、2階端の部屋へと案内された。



設備のひとつひとつを指さしながら、


丁寧に説明してくれる。さっきの会話と同じ速さで。


シャワーやトイレの場所、食事の時間に洗濯のこと。


話し終わると彼はまた、「ゆっくり休んでね」とにっこり笑い、

階下の厨房に、入っていった。



靴を脱いで、ベッドに腰かけて伸びをして、そのまま後ろに倒れ込む。

細い角材を組んで、ベニヤを貼って、白く塗る。古くて、ごく簡易なロッジではあるけれど、

これまでたくさんのトレッカーを迎えてきた歴史は、しっかりと刻まれている。



期待を超える温度のシャワーを浴びて部屋に戻ると、

2階も、1階も、全部の部屋が埋まっていた。



ディパック・シェルパの宿、満員御礼。


ロッジ全景・・・味があるのです。
ぎしぎしへこみはしますが・・・味があるのです。




味のある、看板。



 

ささやかな、夕食。一応「春巻」とのこと。
うまかった!
脱いだ瞬間、報われました。








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